環境と印刷インキ

 印刷インキ工業連合会は、平成5年(1993年)「環境・安全・健康に関する基本方針」を制定し、それに準じて会員各社では健康の確保と地球環境の保護に調和した製品を提供すべく、オフセットインキ、グラビアインキ等各種インキそれぞれに対応したインキの開発、製品化を行ってまいりました。特に環境への関心は強く、なかでも地球温暖化に関しては、私たち印刷産業界もその原因となるCO2排出の一端に関わっていることから、その対策を講じる努力は重要な課題のひとつであると受け止めております。
 一般的にインキは、印刷された後にインキ中に含まれる有機溶剤が蒸発して乾燥塗膜を形成します。ここで気化した有機溶剤は概ね燃焼処理を施して水とCO2とに分解され大気に放出されることになります。したがって会員各社は、CO2の発生源となっている有機溶剤をインキ中から極力減らすべく日々努力を重ねております。CO2対策処方としては溶剤成分の水性化やバイオマス化などが挙げられ、この取り組みは石油など天然資源の枯渇化対策にも繋がります。
 当連合会ではこれら活動の成果や進捗状況などをアンケート形式で独自に調査を行い、その結果を連合会ホームページ上で公開したり、「植物油インキマーク」や「NL マーク」など環境に関する準拠制度を制定するなどして環境改善活動を推進してきました。また最近では更に環境対応への活動目標を高めた「インキグリーンマーク制度」を導入し、業界内の活性化を促す取り組みを行っています。
 昨今、情報のデジタル化という荒波に揉まれながらも、未だ私たちの身の回りには多種多様な印刷物が至るところに溢れており、その需要には根強いものがあります。今後更に印刷産業界が発展を続けるためにも、当連合会は印刷インキを通じて地球環境の保全に貢献してまいります。

環境対応型インキ

平版インキ

植物油インキ (大豆油インキを含む)
ノンVOCインキ
UVインキ
リサイクル対応型UVインキ

新聞インキ

植物油インキ (大豆油インキを含む)

フレキソインキ(樹脂凸版インキ)

水性インキ
植物油インキ (大豆油インキを含む)
グリコールインキ
UVインキ

スクリーンインキ

水性インキ
UVインキ

環境対応型平版インキ

 現在の平版インキの殆どは、芳香族成分を含まない高沸点石油系溶剤を使用したインキです。高沸点石油系溶剤は合成樹脂を溶解し、印刷適性を得るために重要な役割を果たしています。

平版枚葉インキの組成

 当連合会の行った「環境対応型印刷インキに関するアンケート(2018年調べ)」結果から、環境対応型平版インキの生産比率は、UVインキ 10.1%、植物油インキ 95.6%、ノンVOCインキ 0.8%でほとんどを占めています。

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環境対応型平版インキの生産量と生産比率(単位:t、%)
  2011年度 2013年度 2015年度 2017年度
生産量 比率 生産量 比率 生産量 比率 生産量 比率
植物油インキ 124,926 85.0 115,999 89.3 105,680 95.2 95,563 95.6
エコマーク登録インキ 121,748 82.9 117,873 90.7 103,826 93.6 91,550 91.6
ノンVOCインキ(UVインキを除く) 1,196 0.8 2,239 1.7 1,617 1.3 925 0.8
UVインキ 6,850 4.7 7,250 5.6 8,920 7.4 11,204 10.1
リサイクル対応型UVインキ 1,059 0.7 3,205 2.5 3,835 3.2 3,924 3.5
合計 146,919 129,950 119,904 111,126

*合計:会員会社の平版インキ(オフ輪、枚葉、UV)生産量

環境対応型グラビアインキ

 当連合会の行った「環境対応型印刷インキに関するアンケート」結果から、特殊グラビアインキ全体に見る環境対応型インキの生産比率は、ノントルエン型76.0%、水性インキ4.2%で、全特殊グラビアインキの80.2%を占めています。

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環境対応型グラビアインキの生産量と生産比率(単位:t、%)
  2011年度 2013年度 2015年度 2017年度
  生産量 比率 生産量 比率 生産量 比率 生産量 比率
ノントルエン型 68,040 61.4 72,970 62.9 72,464 61.7 83,351 76.0
水性インキ 6,845 6.2 7,569 6.5 6,590 5.6 4,574 4.2
合計 110,896 115,977 117,535 109,628

*合計:会員会社のグラビアインキ生産量

ノントルエンインキ

 ラーメンやスナック、レトルト食品などの袋はプラスチックフィルムにグラビア印刷されています。いろいろな種類のプラスチックフィルムが用途に応じて使い分けされています。このため、特殊グラビアインキは、多種多様の樹脂や溶剤が使用されてきました。溶剤の中でもトルエンはインキの性能や印刷適性が良いことから使用されています。
 一方、トルエンの作業環境の管理濃度が20ppmまで引き下げられ、その排出を極力抑えるため、インキのノントルエン化が進むことが予想されます。
 ノントルエンインキとは、印刷インキ工業連合会では、トルエン含有量0.3%未満のインキと定義しています。(2008年12月より)

水性インキ

 水性インキは、有機溶剤の替わりに水を主に使用したインキで、主用途は、建材、紙、フィルム等です。
 2017年度の水性インキの生産量は約4,500トン強で、特殊グラビアインキ全体の4.2%弱に留まっています。
 現在、水性インキの使用にはインキや機材の技術的課題が残されていますが、関連業界の協力を得て、さらなる研究開発を進めています。

環境対応型フレキソ(樹脂凸版)インキ

 フレキソインキは段ボール用途が多く、主に水性インキやグリコールインキが使用されています。カートンやフィルム用途では水性インキ、UVインキが使用されています。環境対応型インキの生産比率は約70%です。
(統計数字は「2017年度環境対応型印刷インキに関するアンケート」結果より)

参考資料

VOCについて

 VOC は、 Volatile Organic Compounds の略で、いろいろな定義があります。

・大気汚染防止法におけるVOC
 大気中に排出された、または飛散した時に気体である有機化合物(浮遊粒子状物質及びオキシダントの成分の原因とならない物質として政令で定める物質を除く)
 大気汚染防止法第32条(条例との関係)の中で「条例で必要な規制を妨げるものではない」とあり、地方条例の確認も必要です。

・WHOの化学物質分類におけるVOC
 WHO(世界保健機関)の化学物質の分類において「高揮発性有機化合物」および「揮発性有機化合物」に分類される揮発性有機化合物。(分類においては、下表を参照)
 印刷インキのエコマーク基準ではWHOのVOC分類を採用しており、下表のVVOCとVOCをVOCと定義しています。

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世界保健機関(WHO)の化学物質の分類
分類名称 略記 沸点範囲
高揮発性有機化合物
Very Volatile Organic Compounds
VVOC <0℃~50-100℃
揮発性有機化合物
Volatile Organic Compounds
VOC 50-100℃~240-260℃
準揮発性有機化合物
Semi Volatile Organic Compounds
SVOC 240-260℃~380-400℃
粒子状物質
Particulate Organic Matter
POM >380℃

・Method24(米国EPA)で規定しているVOC
米国EPAはMethod24で定めた方法で測定される値を「オフセットインキのVOC値」としています。
・測定概要:強制排気オーブンで110±5℃、1時間での水分を除く加熱減分の重量比
・オフセットインキのノンVOCの定義:加熱減分1%未満
・本法で測定されるVOCの成分は石油系溶剤だけでなく110℃、1時間で蒸発する植物油由来の成分なども全てVOCとなる